人生いろいろ、でも無駄じゃない

2月20日、今日の誕生日の花は「ウグイスカグラ(鶯神楽)」。ウグイスのさえずりがはじまるころに小さな花を咲かせます。花言葉は、「未来を見つめる」「明日への希望」です。新聞を見れば残念な見出しが並び、明るい未来を予感できる雰囲気すら感じません。閉塞感しか感じられない時代の中にあって、人生を悲観せず、前へ前へ歩まれた先人たちの生き様や力強い言葉に触れると、未来を切り拓く勇気を与えてくれます。

9度の転職、夜逃げ、火事など数々の修羅場を乗り越え、誰も思いつかなかった「百均」でダイソーを一時代で築き上げた大創産業の創業者・矢野博丈さん(東広島市)が逝去されました。91年にダイソー直営1号店を高松市に出店し、全国への出店を本格化させ、業界首位に成長。2001年には、台湾に出店し海外進出をスタート。現在は、世界26か国・地域で5000店超を展開し、2023年の売上高は5891億円に上る大企業となりました。

人生と経営は常に崖っぷち──

矢野さんの人生は波乱万丈。転職を繰り返した後、夫婦ではじめた日用品の移動販売でようやく商売が安定したころに放火に遭い、全ての家財を失い、東京に夜逃げ。二十代の頃は運命の女神を憎み続けていましたが、ある結婚式に参列した時に京都のお坊さんがこんな話をされたそうです。

「仏縁に導かれたお二人だから、きっといい夫婦になられるでしょう。けれども、好むと好まざるとに拘らず、これからお二人には艱難辛苦(かんなんしんく)が押し寄せてきます。それを乗り越えたら、きっといい人生が送れるでしょう。人生にはいろんなことが起こりますけど、無駄は一つもありませんよ」

その言葉を聞いた時は、「何を言うんだ。俺の人生、無駄しかないじゃないか」と思って腹が立ったんですけど、ふと考えてみると、仏さんがこいつは見どころがあると思って、人の何倍も艱難辛苦を与えてくれたんじゃないか。運が悪いと思い続けてきたけど、もしかすると運がいいんじゃないか。そう思うようになってから、少しずつ心のモヤモヤが晴れて、いいことが起きるようになりました。」

矢野さんが大切にされてきた三つの言葉があります。「恵まれない幸せ、恵まれる不幸せ」、「仕方がない」、「ありがとう」だそうです。矢野さんのお人柄が偲ばれる言葉ばかり。心よりご冥福をお祈りいたします。