より高いレベルを目指して‥
うららかな風を開設してもうじき2年になります。利用者様も経験を積んで、仕込みや盛り付けなどスタッフが指導しなくても一人で行うことができるようになった方もおられます。力量を着けた利用者様のステップアップを目的として調理業務(まずは調理補助業務)に携わってもらおうと考えています。ただ調理は弁当作りの極めて重要な心臓部であり、誰でも良いという訳にはいきません。衛生管理がきちんとできること、清潔な身だしなみであること、スタッフの指示を厳守し適確に実行できること、協調性があること、利用が安定していることなど一定のレベルに到達していることが要件となります。利用者のみんな、もっと高いレベルを目指して頑張りましょう!
昨日は利用者様と「味噌豚丼」(税込600円)の盛り付けを行いました。味噌だれにつつまれた豚とご飯はほんとうに相性抜群!肉食系大好きなお客様にはストライクのメニューだったのではないでしょうか。来週の特別メニューは、「えびフライ丼」(600円)、「金沢カレー」(680円)、「野菜ごろごろグラタン」(600円)などバラエティに富んだメニューばかりです。また日替わり弁当も人気メニューがずらり。売り切れご免ですので、どうかお早めにご予約ください。
『心を閉じたお婆さんに教えられたこと~鈴木秀子(国際コミュニオン学会名誉会長)』
私は長年、死を前にした多くの方々と寄り添ってきました。そこで感じたのは蜃気楼のような欲望にとらわれず当たり前のことを大切に生きた人、大自然に親しんで生きてきた人は最終的には深い感謝の念に行き着くということでした。しかし、自己中心的な考えや自他を否定する考えを捨てきれなかったとしても、死というギリギリの状態に至った時、人間の本質である感謝に戻っていく人も決して少なくありませんでした。
数年前ある高齢者施設で手をギュッと握りしめたまま開こうとしないお婆さんに出会いました。家族に聞くと、お婆さんは幼いお孫さんを負ぶっていた時に脳出血を起こして転倒し、お孫さんに怪我をさせた辛い経験がありました。そのことで自分を責め抜くうちに手を握りしめる習性が身につき、性格も頑なになって周囲に辛く当たるようになりました。お孫さんはその後、元気に成長しましたが、お婆さんは「自分は悪いことをした」という気持ちから解放されることはなかったといいます。私はベッド脇に座ってその方の手を柔らかく握り、名前を呼びながら語りかけました。
「お孫さんは後遺症もなく元気に育っていると聞きましたよ。きっとお婆さんが大事に育てられたからなのでしょうね。お婆さんがいたからこそ、その子は良い子に育ったのです。負んぶして可愛がってくれたお婆さんの愛情は、お孫さんの心にも深く浸透し忘れられずに残っています。すべては許されています。大丈夫ですよ」
しばらくすると、強く握りしめた拳が少しずつ緩んでくるのが手の感覚を通して伝わってきました。拳に目をやると、食い込んだ爪の跡がクッキリと見えました。
「お婆さんがほら、手を開きましたよ」
その言葉を聞いて誰よりも喜んだのは娘さんです。
「十年以上、手を開いたのを見たことがありませんでした。本当に信じられません」ととても驚いた様子でしたが、それまで眉間にシワを寄せた険しい表情が少しずつ穏やかな表情に変わっていくお婆さんの様子に接しながら、スタッフを顔を見合わせて微笑んでいらっしゃった娘さんの姿がいまも忘れられません。
お婆さんはそれからしばらくして亡くなりました。その時はかつての頑なな姿が嘘のように温厚な表情になり、お世話になった施設のスタッフや医者、看護師一人ひとりに「ありがとう、ありがとう」と繰り返し感謝の言葉を述べながら旅立たれました。私たちは人生の中で様々な経験を積みます。辛く悲しい経験は時にその人の肉体的、精神的にギリギリの状態に追い込むことがありますが、その人の本当の姿が現れるのは、まさに見栄やプライドを捨て去った時なのです―――。