最後の最後まで最善を尽くす

 台風10号は九州の南海上にあり、ゆっくり北上しています。非常時の断水や停電などに備えておきましょう。ちなみに今日の誕生花である「タイム」の花言葉は、勇気ある行動です。避難情報で避難の指示が発令されたら、躊躇せず避難所など安全な場所に移動しましょう。そして周囲にも避難を呼びかけられる勇気ある行動で守れる命があります。みんなで声を掛け合って、大切な命を守ってください。

 今日は利用者様とグリーンカレーの盛り付けを行いました。タイの代表的なカレーですが、皆さんあまり馴染みがないせいか、思ったほどご注文が入りませんでした(涙)。試食させてもらったのですが、ココナッツミルクの甘さ、唐辛子の辛さ、レモングラスなどのハーブの風味が、口の中で心地よいハーモニーを奏でます。いや~何ともおいしいカレー!ただ来月以降の献立に入れるか――正直、悩んでおります。

「負けました」が人を育てる!

 藤井聡太王位の登場が「変革」をもたらしたのは、将棋界だけではありません。子どもの教育に将棋が良いのでは―――そう感じた人も多いはずです。挨拶が心を落ち着かせ、負けが人を豊かにします。

 将棋には、『三つの礼』の決まりがあります。

【始まりの礼】
 対局に際して「お願いします」と両者が挨拶を交わします。そしてこれ以降、対局中はずっと無言のまま戦いが進んでいきます。

【負けの宣言の礼】
 静まり返っている対局場の沈黙を破るのは、「負けました」という敗者の宣言です。勝った側ではなく、負けた側が負けを認め、相手に宣言しなければならないのです。

【終わりの礼】
 対局後は一局を振り返る検討会、感想戦を行います。その感想戦を終えて一局が終了しますが、その最後には、「ありがとうございました」と両者でお辞儀します。

 子どもたちを指導する際には、この3つの礼の重要性を徹底して教えます。将棋は、目の前の相手がいなくして指すことはできません。目の前に座っている人がいてくれるからこそ一局が成立します。ですから、相手への敬意を表して「お願いします」「ありがとうございました」と挨拶をするのです。これらの相手への敬意を表す例は、他のスポーツ競技などでも見られますが、一線を画しているのが「負けました」の礼でしょう。将棋では、負けた側が相手に宣言しなければならず、これは悔しいものです。負けの宣言の礼の後は、一局を振り返る「感想戦」が始まります。この感想戦こそが、将棋を将棋たらしめる大事なエッセンスです。勝者も敗者も関係なく、二人が感想を述べ合います。勝った側は相手の気持ちを察して大喜びしたい感情を堪え、相手へのリスペクトを言葉に込める。負けた側は冷静な目で勝負の内容を顧みる中で「心を折りたたんで」波立つ心を浄化していきます。

「直前まで真剣勝負を繰り広げていた相手と『もっと違う手もあっただろう』と最善を探り合う。これ、すごいことですよ。将棋の場合は、あえて言うんです。それは、お互いに高みを目指す中で、高度な学びが得られるから。それと、一局を俯瞰する中で『あの時、勝ちを急いで焦る心理が邪魔をしていた』などと自己の内面を見つめ直す時間にもなる」(日本将棋連盟学校教育アドバイザー・安次嶺隆幸さん)

 印象深いのが、羽生善治九段があるタイトル戦に挑んだ際に目にした光景です。羽生さんには残り時間が1時間あり、自分が負けだとわかっている局面でいつまでも投了せずに盤面を凝視し、考え続けていました。後日、「なぜ、考え続けるんですか?」と尋ねられたところ、羽生さんは、こう答えました。

「簡単に投了すれば、その時は楽だけれど、次に全力が出せなくなる。『自分は最後まで最善を尽くして負けたんだ』と、感想戦などを通じて振り返った時に思えるかどうかが大事なんです」