今生の別れと思えば全力で愛す

 今日は「土用の丑の日」です。うららかな風では、「うな丼」の販売しました。そのうな丼は・・・利用者様と二人で作りました。仕入れ値が高いうなぎですので、販売価格も1,500円とうららかな風では最高額になりました。ですから、ご注文を頂けるのだろうかと内心不安でしたが、全くの杞憂でした。たくさんご注文を賜りまして、ありがとうございました。既に夏バテの方もおられるかもしれませんが、うなぎに限らず、それぞれの夏バテ対策を講じて暑い、暑い夏を乗り切りましょうね。

『瀬戸内寂聴に学ぶ「一期一会」の生き方』 

 人を愛することは本当に喜びだけど、喜びの何倍か苦しみですものね。その意味では、いまが一番自由。自分の心から解き放たれたって感じで。私は出家してから一瞬も、後悔したことはないです。しまったと思ったことない。他のことじゃ、年がら年中、しまったと思うことはありますが、出家したことに対しては一度もない。これは本当に有り難いことですね。

 出家したって、腹の立つことも不合理なことも起こります。そのときに、昔だったら、いちいち、カーッとしてた。いまはね「これは仏がいま、私にこういうふうにする方がいいと思うから与えてくれてるんだ」というふうに思えるんです。そうすると楽ですよ、とても。以前は自分の力を信じてきましたから、小説家になれたのも、私に才能があったからだとか、努力したからだ、運があるんだとか、自分というものに対して、非常に自信を持ってました。だけど、そんなものは何もないんでね。結局、それはみなさまに、そういうふうにさしてもらったんだって思えるようになった。いま、とても不景気なのに私の本が売れるのも、それは私の力じゃなく、そういうふうにしてくれるんだって思えます。

 だから、私は小説を書いていますが、もし、それがいけないなら、私がジタバタしないでも、仏、もしくは超越者が私の頭を破壊するとか、腕を折るとか、自然に向こうからしてくれると思うんです。だから、ちっともジタバタしない。私は今東光先生とのご縁で天台宗に入ったのですが、今先生をすごい人だなと思ったのは晩年、ガンだと自覚してからも立派でしてね。ちっともあわてなかったです。「自分のおいしいところを食べて太りやがったんだから、手術したガンを持ってこい。焼鳥にして食ってやる」って、冗談をいって。我々仏教者は生死を見極めるというのが根源なんですが、今先生は本当に生死を見極めていたと思います。

 一期一会という言葉がありますが、私は日常、そう思っていますよ。例えば、きょう、私たちがそれこそなんの因縁だか、お会いしましたでしょ。だけどこれで別れた後、どうなるかわからないでしょ。だから、私たちは会って別れた瞬間、それは永別だと思うのです。間違いないんです。だけど誰もそう思わないのね。私は講演に行くと、よく奥さんたちに「亭主が会社に行くときに帰ってくると思うな」というんですよ。そう思うと、行ってらっしゃいって言葉が違うっていうんですよ。必ず帰ってくると思うから、疎かにするんで、もう会えないんじゃないかと思えば、その時その時、一生懸命に愛しますよ。そうでしょ。そういうふうに考えてほしいって、講演するんです。