オギロパンのプライドを守るために‥

 今日は朝は肌寒かったものの、一日を通して気持ちの良い天気になりました。やはり陽光を浴びると体が元気になります。そして、うららかな風は5月の誕生日会を行いました。お二人ともうららかな風の利用を開始して1年以上経ちます。お二人に共通することは、欠席されることがほとんどない優等生の利用者様なんです。お一人はこのブログで何度か紹介した『トイレの神様』。便器に頭を突っ込んで、隅々まで入念に掃除をして下さいます。もうひと方は、うららかな風のムードメーカーで、話や行動が茶目っ気があり、弁当作りで殺伐とした状況の時もほっこりさせてくださるんです。ただ今日からしばらく入院されることになり、しばしのお別れとなります。お二人とも、誕生日おめでとうございます。これからもうららかな風の仲間たちと一緒においしいお弁当を作りましょう。ハッピーバースデー♪

 その知らせは三原市民(私も三原出身)にとって唐突で衝撃を受けました。Face bookの投稿で三原市民のソウルフードであるオギロパンの歴史は突然終止符が打たれことを知りました。福山市民にはオギロパンをご存じの方はそう多くはないでしょうが、三原市民にとっては、小さいころから食べた思い入れのあるパン。素朴で、垢ぬけない、どこか自己主張を感じる特徴的なパン。私の亡き父はオギロパンと言えば「あんぱん」と、大のお気に入りでした。私はアーモンド形の「メロンパン」が大好きでした。小さい頃、家族で頬張った光景が脳裏に浮かびます。

オギロパンより、お知らせ、及び、お礼とお詫び
 1918年、大正7年より三原でパン・菓子を製造し105年を過ぎる今年、弊社はその歴史に幕を引くことにいたしました。2024年1月6日(土)をもちまして、会社を精算し、倒産いたします。長い正月休みは、店を閉める準備期間だったのです。昨年末30日に従業員を全員解雇し、これにて完全に製造を停止いたしました。このタイミングでの精算は、まだ若干資本が残っているうちに、従業員の再就職ができる環境をつくりたかったこと。諸経費の増加による経営の圧迫により、これ以上の利益率の向上が望めないこと。過去の融資について、返済の見込みが薄いこと。 消費税、社会保険料の滞納が増え、こちらも返済を続けると従業員の解雇が難しくなること。以上が、一般的に言われる、自己破産の理由ですが、やはり、古い話になりますが、バブル崩壊からの業態変化での経営形態の失敗が一番の理由だと考えています。
 私も、それも承知で4代目を引き継ぎ、努力してまいりましたが、そもそも職人ですから「食べ物で遊びたくはない」「美味しいものは美味しく食べてもらいたい」、そんな努力を重ねたつもりでした。それはオギロパンのプライドを守るためであり、三原の味を守るための自分自身との戦いでした。』(2024年1月6日付 Facebookの投稿からの転載)

 お知らせは、社長としての生々しい、苦渋の決断が伝わってきます。業種や事業規模は異なりますが、社長としての立場は同じで身震いします。逼迫した経営で、社会保険料を滞納しなければならない程に追い詰められた状況‥。100年続いた味を守らなければならない思いと、時代とともに変化する消費者嗜好とのギャップ、次々に現れる新規同業者。それでも良いものを作り続ければ必ずお客様から支持されるとの信念で突き進む―――。

 しかし、いくら頑張っても、どんなにもがいても、抗えない運命があります。社長はこれで終わりではありません。同じ業種なのか、違うジャンルになるか分かりませんが、今回の学びを次へのステップに繋げていくことでしょう。そしていつかオギロパンをリバイバルして欲しいと願っております。その時は、我が娘と一緒にオギロパンを食べて、亡き父の思い出を語りたいと思います。