自分がかがめばよい

 弁当配達をしておりますと、昨日までは見られなかった桜の花が一気に咲き始め、日当たりの良い場所では五分咲きの桜もありました。ただ今日は一転して朝から降り続く雨、そして雨。冬を乗り越えて一年に一度の晴れ舞台を迎えようとした桜たちも、いい加減にしてくれ‥と天を恨んでいるのではないでしょうか。

 そんな雨の中ではありますが、多くのお客様にご来店いただきました。皆様には感謝しかございません。そして、今日は欠席された利用者様もなく、フルメンバーが集いました。ご家庭の都合や体調不良で、皆さんが揃うことは本当に珍しいのですが、こんな日が来るんですね。私にとって利用者様は家族同然。こうして皆さんの顔を見ることができ、そして一緒に弁当作りができて、これ以上幸せなことはありません。みんな、ありがとう。

 昨夜のニュースで、カリフォルニア州のファストフード店従業員の最低賃金が時給20ドル、日本円で約3,000円に引き上げるという報道を目にしました。ファストフード店の従業員、およそ50万人が対象になるそうです。一日8時間勤務するとして、一日2万4千円、一月48万円、年収580万円になります。30年間デフレが続いた日本では考えられない金額です。東京の最低賃金は千百円ちょい。バブル期には米国をも凌駕した日本は今は昔の話。日米の差に愕然とします。

 世の中では、そなたたちのような富者が、みんな足ることを知らずに、飽くまで利をむさぼり、不足を唱えている―――。

 それはちょうど、おとながこの湯ぶねの中に突っ立って、かがみもせずに、湯を肩にかけながら、湯ぶねが浅すぎるぞ、ひざまでも来ないぞと、怒鳴るようなものだ。もしも望みにまかせて湯をふやせば、小さい子どもなどは湯にはいれなくなるだろう。だからこれは、湯ぶねが浅いのではなくて、自分がかがまないことが間違いなのだ。この間違いが分かってかがみさえすれば、湯はたちまち肩まで来て、自然と十分になるだろう。ほかに求める必要がどこにあろうか。

 二宮尊徳の説いた教えです。今まで様々な経営者と仕事をしてきましたが、かがむことを忘れた経営者が何と多いことか…。この言葉は私自身への戒めです。