私、待っています。

今年2月に店頭販売をスタートしました。その頃、うららかな風のある水呑町に毎日のように弁当のチラシを持ってポスティングをしていました。とにかくお弁当を売らなければならない。町内を縦横無尽に歩き回り、万歩計は2万歩を超える日が度々ありました。ある日、そのチラシを手にご来店された70代の女性の方がおられました。とても社交的でお客様として来られた初日から、とても懇意にしていただきました。そして色々な話をしました。

「息子は関東の大学に進学し、そのまま就職したため一緒に暮らすことはなかった。帰ってこいとは言わないが、たまには電話ぐらいしてくれれば良いのに。息子は忙しいんだからお嫁さんが気を使って電話して欲しい。意地があるので私からは絶対に電話しないの‥」と愚痴を言われることもありました。その日から毎日のようにお弁当を買いに来られました。いつもマイカーでお越しになられていたのですが、しばらくすると、徒歩で来られるようになりました。ご自宅は丘の上にあり歩くには相当しんどいと思います。

「お車はどうされたのですか」と尋ねたところ、「手放したんですよ」とだけ仰いました。その後、ばったり来られなくなりました。最後にお顔をみてから2か月が経過しました。ご近所の方から、「認知症がすすんでしまって、娘さんが面倒をみられていたのですが、骨折をきっかけに介護施設に行かれたんですよ」

あのころ経営的にも見通しが立たない厳しい時期で、悩ましい日々が続いておりましたが、お客様との何気ない会話が唯一ほっとするひと時。まるで母と会話をしているような幸せな時間でした。もっと色々なお話をしたかったです。ありがとうございました。そして、またうららかな風のお弁当を買いに来てください。お待ちしております。