限りある命が紡ぐ、未来への志

 松本零士原作のアニメ『銀河鉄道999』。主人公・鉄郎は、不老不死の「機械の体」をタダでもらえるという終着駅、惑星大アンドロメダを目前にして、手渡されたカタログを前に激しく葛藤します。

「限りある命だから、人は一生の中で精いっぱい頑張る。短い時間で何かをやり遂げようとするから、お互いに思いやりや優しさが生まれるんだ‥」

 鉄郎が導き出したこの答えは、単なる死への恐怖の克服ではありません。それは、「生の密度」と「意志の継承」にこそ、人間が生きる真の意味があるという発見でした。

なぜ「限りある命」なのか

 松本零士氏は、鉄郎の選択の背後にある信念をこう語っています。

「人は、限りある命だからこそ頑張れる。もし永遠の命が保証されたら、きっと何もしなくなりますよ。終わりがあるからこそ、後世に何かを伝えようと一生懸命に働く。それが大事なんです。」

 科学技術が進歩し、企業が「不老」を実用化しようとする現代、私たちは鉄郎と同じ問いに直面しています。しかし、私たちが真に求めるべきは、単なる「生存期間の延長」ではなく、その時間を使って「何を成し遂げ、誰に何を託すのか」という志ではないでしょうか。

貧しさと戦争の記憶から生まれた優しさ

 松本先生の思想の根底には、太平洋戦争後の極貧生活という実体験があります。「カネだけじゃない」「貧しくても頑張る人間は必ず報われる」という信念。そして、思想や宗教、民族感情をあざけることなく描くという、他者への深い敬意です。

 鉄郎が感じた「思いやり」とは、自分も他者もいつかはいなくなるという「有限性の共有」から生まれるものです。「一期一会」の精神は、死を忘れた機械の体では決して持ち得ない、生身の人間特有の輝きなのです。

子どもたちが笑顔でいられる未来へ

 現在、世界のあちこちできな臭い情勢が続いています。子どもたちが生き延びることに精一杯な世界ではなく、誰もが笑顔でアニメーションを楽しみ、夢を語れる世界であってほしい――。この願いは、松本先生が作品に込めた「地球という名の宇宙船の乗組員」としての連帯感そのものです。

「時間は夢を裏切らない、夢もまた時間を裏切ってはならない」

 この言葉が示す通り、延びた寿命や進歩した技術は、子どもたちの笑顔を守るためにこそ使われるべきです。鉄郎が「個人の永遠」を捨て、他者と共に生きる「有限の命」を選んだように、私たち大人もまた、自分の利益を超えて「次の世代にどんなバトンを渡せるか」を問い直す必要があります。

 やるべきことをやり遂げ、満足して死ぬことができる。そんな「一生懸命に生きる自由」が、すべての子どもたちに約束される世界を、私たちは志さなければなりません。