言葉を超えて届くもの ―― 「いのち」を伝える率先垂範

言葉は人類の発展に大きな力を与えましたが、同時に人を傷つけ、悩ませる刃ともなります。私たちは、本当に大切なことを伝えようとする時、つい「正しい言葉」に頼りすぎてはいないでしょうか。
相大二郎先生の著書『いのちって何』の中に、深く考えさせられる一節があります。
「生命が大事だ」「いじめはいけない」と大人が何百回口にしたところで、その言葉は子供たちの頭の上をそよ風のように通り過ぎるだけではないか。なぜなら、彼らはその言葉を知識(サウンド)として、すでに嫌というほど耳にしているからだ。
本当に「生命の大切さ」を伝えたいのなら、むしろその言葉を使わない方がよい。大人が自らの行動を通して示し、子供たちが自ら気づくよう工夫すること。そのために大人に求められるのは、「率先垂範」という情熱と責任性である。
禅の教えにある「不立文字(ふりゅうもんじ)」も、言葉の限界を知り、体験や心で通じ合うことの尊さを説いています。
渡り鳥が教えてくれた「共に飛ぶ」ということ
同書には、渡り鳥の群れにまつわる、ある不思議な光景が記されています。
美しい隊列を組んで飛ぶ渡り鳥の群れの中にも、稀にリズムに乗れず、遅れてしまう「はぐれ者」がいます。しかし、群れは彼を見捨てません。 ある瞬間、整然とした隊列をあえて崩し、一団となって「団子状態」になります。そうして遅れている一羽を優しく巻き込み、しばらく混沌としたまま飛び続けた後、再び全員で新しい隊列を整えて、山影へと消えていくのです。
この自然の営みは、私たち人間に大切なことを示唆してくれます。
「うららかな風」の現場から
就労継続支援事業所「うららかな風」では、障がいを抱える利用者様と共に、日々お弁当作りに励んでいます。
現場は決して平坦ではありません。心が折れてしまう日もあれば、言葉で人を攻撃したり、作業がうまくいかず右往左往したりすることもあります。厳しく指導し、時には優しく諭しますが、同じことが繰り返される日々に、支援の難しさを痛感することもあります。
しかし、渡り鳥が隊列を崩して仲間を巻き込むように、私たちもまた、彼らのペースに合わせて「共に在る」ことを諦めてはならないのだと思います。
「できないからといって投げ出さないこと。彼らを愛おしいと思う愛情を深めること」
「ワンチーム&ワンハート」を合言葉に。 言葉に頼りすぎるのではなく、共に汗を流し、共に悩み、共に歩む背中を見せること。その積み重ねの中にこそ、本当の「いのちの輝き」が宿ると信じています。


