裸木を見よ!強く、逞しく、泥臭く

 昨年から私の母は次々と病に冒され、傷つきながらも逞しい生命力でいつも乗り越えてきました。過去、不治の病であるがんになり、大学病院で3度も手術を受けました。今はできるかぎり侵襲性の低い治療が主流ですが、30年前は侵襲性の高い外科手術が主流の時代。大きな傷跡と後遺症により手や足の浮腫もひどく、身体はぼろぼろ。それでも、がんは完治しましたので、れっきとした「がんのサバイバー」です。

 それにしても最近の母は病気にならない日はないほど、病気と闘い続けています。昨年から最近までは、腎臓結石、腎盂腎炎、インフルエンザ、コロナ‥。一時は食欲がなく体重が激減、能面のような表情で、話しかけても反応はなく、さすがに今回は厳しいか‥と感じたこともありました。

「地面に引きずり込まれる夢を見た」

 背筋が凍るような夢‥ところが、今回も無事に回復、施設に戻ることができました。入院中には見せなかったスタッフさん、入所者さんと談笑するほど生気が戻りました。その生命力たるや‥。あらためて母の生命力の強さに驚きを覚えました。私だったら、とうに旅立っていたことでしょう。母に負けるわけにはいきません。泥臭くても、強く、逞しく、粘り強く、裸木のように生きていかねば!

『 裸木(はだかぎ)』  詩人:坂村 真民

 冬のさなかにうまれた者が 

 少しの寒さにふるえていて どうするぞ

 裸木を見よ 

 一切を脱落させて 

 リンリンと 寒風に おのれをさらし

 毅然として大地につっ立っているではないか

 弱音や愚痴が出そうになったら

  裸木の前に立て

 そして、その命に触れろ

 朝日夕日に光る 巨幹万枝の姿を見つめろ