能なしであったがゆえに耐えることができた

今日の誕生日の花は「梅」。古くから、梅は「冬から春への希望」や「忍耐」といった象徴とされ、詩や文学、絵画などさまざまな芸術作品に登場します。そのため、梅の花は日本人にとって、美と共に歴史や文化の一部として親しまれてきました。
梅の花は、なぜ美しいのか―――
寒さに強いという特性があります。そのため、他の花がまだ咲かない時期でも、早くから美しい花を楽しむことができます。寒さに負けず凛として美しく咲くその姿は、私たちに、忍耐、勇気や希望を与えてくれます。
鍵山秀三郎さん(イエローハット創業者)が、先月1月2日にご逝去されました。イエローハットを一代で築き上げ、「トイレの神様」「掃除の神様」と呼ばれ、清掃を通して人間教育を実践されてきました。鍵山さんのお人柄が伝わる言葉を紹介します。
1963年、社員数がまだ5、6人だった頃、当時の自動車部品業界は、荒々しい人が多くいました。営業に行くと、「二度とくるな」と水をかけらたり、差し出した名刺を目の前で破り捨てるお客様もいました。そんな風潮でしたから、自然と社員の心も荒んでいきます。鍵山さんがトイレ掃除をしている横で、社員は平気で用を足し、礼も言わなければ手伝おうともしません。銀行の担当者からは嫌味を言われ、某大学の経営学の先生からは「そんなことをしていたら経営が成り立たない。あなたは経営者に向いていない」とバカにされました。それでも掃除をやめることはありませんでした。
「私は幸いにして、能なしであったがゆえに耐えることができたんですね。これまでいろんな辱めにあってきましたけれども、もし幾らかの才能があったら、とても我慢できなかったでしょう。逆に、中途半端な才能なんか持っていなくてよかったと思うくらいです。」
鍵山さんの思いに触れ、感銘し、奮い立ち、そして困難を乗り越えることができた経営者も多くおられます。足元にも及びませんが、私もその中の一人です。心よりご冥福をお祈りいたします。