強い思いは、がん細胞に届く

 昨夜から未明にかけて、梅雨末期の激しい雨が降りました。大きな雷鳴、屋根に打ち付ける激しい雨音、警報を告げるスマホの着信音‥さぞ眠りの浅い人が多かったことでしょう。梅雨明け、近しです。

 沼隈町でぶどうを栽培されている農家様にお弁当を配達しております。そのお客様から沼隈町の特産品のぶどうを頂戴しました。早速、利用者様、スタッフに食べてもらいました。すると、「あまくて、とってもおいしい」との声が乱舞。私もひと粒頂きましたが、今まで食べたぶどうの中で一番おいしかったです!高級なぶどうを分けて下さり、感謝しております。

 『がんも生きている』

 西洋医学中心の医学界にあって、目に見えない世界の大切さを説き続ける医師がいます。育成会横浜病院院長の長堀優さんです。幾多のがん患者と交流する中で見えてきた病気との向き合い方、病気を抱えて幸せに生きていく術を紹介します―――

 これは私が10年くらい前に出会った患者さんの話ですが、その方はお腹の中にがんが広がっていました。そのことは彼女も知っていたのですが、いつもニコニコされていました。彼女は75歳くらいでしたが、私が回診で病室へ行くと、私の足音で近づいてくるのが分かるようで、いつもベッドの上で正坐して待っているんです。どの先生にもそうだったと思うのですが、「いつもありがとうございます」と、正坐したまま最敬礼をしてくれるんです。その顔は本当にニコニコで満面の笑みでした。私はどこからこの笑顔が出てくるんだろうか、死が怖くないのだろうかと、いつも不思議だったんです。

 ある日のこと、いつものように素敵な笑顔を見せてくれた彼女が真剣な顔つきで尋ねてきました。「先生、私は手術することもあるのでしょうか」と。私は正直にお答えしました。もう手術をしてもがんを取りきれないし、無理をするとかえって大変な結果になると。そうしたら彼女が喜びましてね。実は彼女には肝硬変の夫がいたんです。子供がいなくて親戚も近くにいないから、お互いに支え合って生きていかなければいけない。だからこれ以上入院を続けて、家を空けているわけにはいかないと言うんですよ。本当は旦那さんより奥さんのほうが病状はよっぽど重いんです。でも彼女はこう言いました。

「夫のことが私は心配なんです。あの人は私がいなければどうしようもないから。だからいつもがんの神様に、『もう少しおとなしくしていてくださいね。私はもう少しあなた(がん)と頑張って生きていきますから、大きくならないでくださいね』ってお祈りしているんですよ」って。私はその言葉にとても感動しました。

 がんというのも細胞であって、米国の細胞生物学者ブルース・リプトン博士は「細胞一個一個に、感性がある」という話をしています。例えば単細胞のミドリムシは餌があれば寄っていくし、毒が来ると逃げていく。単細胞ですから脳みそも神経もないわけですが、そういったことが全部分かる。だから博士は「細胞はそれだけで完璧な生命体である。しかも生きる感性を持っている」ということを言っているんです。そうであれば、がんも細胞ですから生きる感性があるので、当然人間の思いとも関係してくる。実際、彼女は長く生きたんです。もって1年という診断でしたが、3年半あまり生きることができた。私は彼女の思いががん細胞に届いたのだと思っています。