失敗をしたら必ず自分のせいにせよ

 5年前の2019年12月4日、医師の中村哲先生は生涯をかけて支援してきた国で銃撃に遭い、73歳で非業の死を迎えました。中村先生が活動したのは、人にとってとても大切な水も病院もない国、アフガニスタン。福岡県で生まれ育った中村先生は35年もの間、アフガニスタンの人たちを助けるための人道支援を続けてきました。大干ばつで多くの人々が餓死や病気で苦しむ様子をまじかに見た中村先生は、「百の診療所よりも一本の用水路」の有用性を説き、現地の住民とともに用水路の建設に着手しました。そして完成した用水路により、緑の大地が蘇り、農業の営みの再生により、65万人以上の命を支えるまでになりました。

 ――― 一隅を照らす ―――

 中村先生は「一隅を照らす」という言葉が好きでした。「一隅」とは「かたすみ」のこと。もしかしたら、あまり目立たない場所のことかもしれません。「照らす」とは「光をあてて明るくする」こと。隣の困っている人のためにやさしく力になってあげることで、まわりの人も明るい気持になっていきます。「自分が今いる場所で、自分にできることを一所懸命やりましょう」。「一隅を照らす」にはそんなメッセージが込められています。

 さて、今日の特別メニューは新作の『甘辛肉のせネギチャーハン』でした。お肉とネギがこんなにたっぷりのってるんです!いや~本当においしかったです。新メニューはいつも試食させてもらうのですが、ご利用者の視線が痛かったです。みんなも食べたかったよね。ごめんなさい。

「幸田露伴が考える運命を引き寄せる二本の紐(ひも)」 渡部昇一(上智大学名誉教授)

 幸田露伴は人生における運を大切に考えています。運というと他に依存した安易で卑俗な態度のように思われがちです。ですが、露伴の言う運はそんなものではありません。その逆です。露伴は人生における成功者と失敗者を観察し、一つの法則を発見します。露伴は言います。

 「大きな成功を遂げた人は失敗を人のせいにするのではなく自分のせいにするという傾向が強い」

 物事が上手くいかなかったり、失敗してしまった時、人のせいにすれば自分は楽です。

「あいつがこうしなかったから上手くいかなかったのだ─」

「あれがこうなっていなかったから失敗したのだ─」

 物事をこのように捉えていれば、自分が傷つくことはありません。悪いのは他であって自分ではないのだから、気楽なものです。こういう態度では物事はそこで終わってしまって、そこから得たり学んだりするものは何もありません。

 失敗や不運の因を自分に引き寄せて捉える人は辛い思いをするし、苦しみもします。しかし同時に、「あれはああではなく、こうすればよかった」という反省の思慮を持つことにもなります。それが進歩であり前進であり向上というものです。失敗や不運を自分に引き寄せて考えることを続けた人間と、他のせいにして済ますことを繰り返してきた人間とでは、かなりの確率で運のよさが違ってくるということです。

 露伴はこのことを、運命を引き寄せる二本の紐に譬(たと)えて述べています。一本はザラザラゴツゴツした針金のような紐で、それを引くと掌は切れ、指は傷つき、血が滲みます。それでも引き続けると、大きな運がやってきます。一方で、手触りが絹のように心地いい紐を引っ張っていると、引き寄せられてくるのは不運であるというわけです。幸運不運は気まぐれや偶然のものではありません。自分のあり方で引き寄せるものなのです。

 「失敗をしたら必ず自分のせいにせよ」

 露伴の説くシンプルなこのひと言は、人生を後悔しないための何よりの要訣なのです。