天意夕陽を重んじ、人間晩晴を尊ぶ

 さあ、一週間のスタートです。7月6日は二十四節気の「小暑」。夏が本格化する頃です。 例年では梅雨明けと重なることが多く、日に日に暑さが厳しくなっていく時季です。天気予報を見ますと、明日からしばらくは梅雨に後戻り。ただその先は梅雨明けになるのかもしれません。昨日7月7日は「七夕」。夜空を見上げて、天の川に願いを込めた方もおられたのではないでしょうか。金子みすゞの「七夕のころ」という詩があります。楽しみにしていた七夕が終わり、そのさみしさをリズミカルに表現した美しくも寂寥感が漂う詩です。

『七夕のころ』 作 金子みすゞ

 風が吹き吹き笹藪の
 笹のささやきききました
 伸びても伸びてもまだ遠い
 夜の星ぞら 天の川
 いつになつたら 届かうか

 風が吹き吹き外海(そとうみ)の
 波のなげきをききました

 もう七夕もすんだのか
 天の川ともおわかれか

 さっき通って行ったのは
 五色きれいなたんざくの
 さめてさみしい 笹の枝

 さて、先週3日間の体験利用を終えた利用者様ですが、正式に利用を開始されました。うららかな風にようこそ!うららかな風のみんなと、福山で一番おいしいお弁当を目指して取り組んでいきましょう。私たちのスローガンは「ワンチーム&ワンハート」そして弁当作りにかける思いは「一個入魂」。この二つの思いを大切にしてください。

 今日は、その新しい利用様とおにぎりセットを作りました。生れて此の方、おにぎりを握ったことがないとのことで、戸惑うことばかり。当然です。しかし、ご自身で最後までやり遂げようという強い意志が伝わるほど、責任感を持った方だと感じました。最初からできる人はいません。少しずつ成長していけば良いのです。そのためには。やってみないとはじまりません。昨日より今日、今日より明日、明日より明後日‥一歩ずつ。焦らず、腐らず、楽しみを感じながら、仲間のあたたかさを感じながら、失敗を恐れず研鑽していきましょう。

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『渋沢栄一が生涯つらぬいたもの』

 発行がはじまった新1万円札の顔として注目が高まっている日本資本主義の父・渋沢栄一。その生涯の中で、実に500もの企業設立に関わりました。渋沢栄一が大切にした信条とは―――

 渋沢栄一の『実験論語』には歴史上の偉人の名が頻繁に出てきます。中でも、栄一が生涯の師と仰いだのは、何と言っても孔子その人でした。特に孔子が生涯貫いたという「忠恕」(物事に真心を尽くし、人を思いやる)を、栄一もまた死ぬまで貫こうとしたのではないでしょうか。

 それを象徴するようなエピソードがあります。アメリカで激しい反日運動が起こった時、栄一は81歳の齢でありながら、日米親善のために少しでも尽くしたいと渡米します。この時、会いたくないと言われながら反日運動のボスに三顧の礼を尽くして面会しました。言葉を交わしているうちに、そのボスはすっかり栄一のファンになり、あなたに会った記念に写真にサインして欲しいと頼んだといいます。栄一は何時いかなる時も目の前にいる人に心のすべてを傾けて対応しました。その誠が相手の心を打ったのです。栄一が生涯貫こうとしたものが如実に伝わってくるエピソードです。

「天意夕陽を重んじ、人間晩晴を尊ぶ」

 栄一が晩年、好んで揮毫した言葉です。朝日の美しさは言うまでもありませんが、夕陽の美しさも格別です。太陽は一日中働き、沈む瞬間に一際鮮やかな光を放つ。夕陽があんなに美しいのは、天がそういう生き方を賞賛しているからです。

 人間もまた夕陽のように、晩年になればなるほど晴れ渡り、残照で周囲を照らすような生き方をしなさい、ということをこの言葉は教えてくれています。栄一もそのような人生を生きた。私たちもまた年と共に佳境に入り、晩熟、晩晴していく人生を目指したいものです。