世界最弱のヒーローに宿る無償の愛

 おはようございます。しばらく休んでいたスタッフさんが今日から復帰します。久々に全員が揃います。これ以上うれしいことはありません。

「ぼくらはみんな生きている 生きているから歌うんだ‥」

 この「手のひらを太陽に」を作詞したやなせたかしさん。彼の作品の根底には、生きるすべてを肯定する優しさがあります。そして、彼が生み出したもう一人の英雄、アンパンマンこそ、その思想の結晶です。アンパンマンはなぜ「世界最弱のヒーロー」と呼ばれるのでしょうか?雨に濡れれば力が出なくなり、顔が潰れれば新しい顔が必要になります。しかし、彼の最大の弱点は、ヒーローとして最も皮肉な「優しさ」にあります。彼は、飢えた人を見れば、迷わず自分の顔であるあんパンをちぎり、差し出してしまいます。それは、自分が弱くなること、エネルギーを失うことを意味します。それでも助けずにはいられない。この自己犠牲の行動こそ、やなせさんが戦争の絶望から見つけ出した「本当の正義」の姿でした。

 やなせさんはかつて、「正義の戦い」を信じていました。しかし、戦争の終結とともに、正義とは立場によって簡単に裏返る、曖昧なものだと知ります。そこで彼は、哲学や思想を超えた、ただ一つの普遍的な答えにたどり着きました。

「飢えた人に食べ物を差し出す」、「溺れた子供を見て思わず川に飛び込む」

 正義とは、偉い人が掲げる大義ではなく、普通の人が、反射的に行う小さな行動の中に宿る無償の愛なのです。アンパンマンが自分を削ってでも誰かを助けることを選ぶのは、この純粋な正義に基づいています。私たちもまた、特別な力など必要ありません。自分の手のひらにあるものを、少しだけ周りに分け与える。そのささやかな優しさが、この世界を強くするのです。