ゆずり葉を読んで‥

いまの日本の行く末を憂い、案じる人は少なくないと思います。直近の一人あたりのGDPランキングでは、世界31位、近いうちに韓国や台湾に追い抜かれるそうです。またSNSによる誹謗中傷は目に余るものがあり、日本人の心の劣化が如実に表れています。日本の国力や品格が悲観的なほど落ちてしまったのは何故か‥。私たちが人間教育を怠ってきたからだと思っています。

私が子どもの頃には教科書には収載されていなかったと思いますが、最近では小学校の国語の教科書に、こんな美しい詩が掲載されているそうです。お恥ずかしいのですが、はじめて目にしました。小学校で勉強することも大変良いことだと思いますが、50代半ばのいい歳のおっさんになったからこそ、胸に沁みますし、次の世代が「こんな国を引き継ぐのは嫌です」と受け取りを拒否されないためには、いまのままの日本で良いわけがありません。

しかし―――。

私たちはどれだけのものを子どもに残していけるのだろう。未来の子どもたちに何を残していくことがいいことなのだろう。

読んだことがある方も、無い方も、ぜひご一読ください。

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『ゆずり葉』 葉河井醉茗

子供たちよ。
これは譲り葉の木です。
この譲り葉は
新しい葉が出来ると
入れ代わってふるい葉が落ちてしまうのです。

こんなに厚い葉
こんなに大きい葉でも
新しい葉が出来ると無造作に落ちる
新しい葉にいのちを譲って――。

子供たちよ。
お前たちは何を欲しがらないでも
凡てのものがお前たちに譲られるのです。
太陽の廻るかぎり
譲られるものは絶えません。

輝ける大都会も
そっくりお前たちが譲り受けるのです。
読みきれないほどの書物も
みんなお前たちの手に受け取るのです。
幸福なる子供たちよ
お前たちの手はまだ小さいけれど――。

世のお父さん、お母さんたちは
何一つ持ってゆかない。
みんなお前たちに譲ってゆくために
いのちあるもの、よいもの、美しいものを
一生懸命に造っています。

今、お前たちは気が付かないけれど
ひとりでにいのちは延びる
鳥のようにうたい、
花のように笑っている間に
気が付いてきます。

そしたら子供たちよ
もう一度、譲り葉の木の下に立って
譲り葉を見る時が来るでしょう。