「常勝」から「常笑」へ

 昨日は配達担当のスタッフが弁当配達に向かうために事業所を出ようとしたところ、自転車に乗った女性が驚いて転倒し怪我をされる事故が発生しました。警察の検分の結果、交通事故事案には当たらないとのことでした。とは言え、お怪我をされたことは事実です。痛い思いをされたことに、深くお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。

 ところで、「ワンチーム&ワンハート」、常日頃より仲間を大切にすることを利用者様、職員に伝えしてきました。今回の事故で、その一端を垣間見ることができました―――。

 弁当配達は待ったなし、たくさんのお客様が到着を待っておられます。一方、けがをした相手方もおられ、警察の見分を受けなければならない状況でした。そんな時、助けてくれるのが仲間です。私たちは病気になることもあります。親族の不幸で休まなければならないこともあるかもしれません。その時に「大丈夫だよ」と言ってあげられる、それが仲間です。普段は配達をしない職員が、代行することになりました。四苦八苦しながらも、何とか無事にお客様のもとへ弁当をお届けすることができました。ブラボー!これからも何かあった時は、みんなで助け合っていきましょう。それが、うららかな風の真骨頂なのです。

 さて、今日は利用者様と職場体験の高校生の三人で特別メニューの「カツカレー」を盛り付けました。作業前は、すぐに終わると甘く見ていたのですが、完成したのはタイムリミットぎりぎり。それでも、初挑戦の二人が黙々と頑張ってくれて、とても良い出来栄えになりました。召し上がられたお客様も、さぞ喜んでいただけたと思います。

「いつも笑顔、いつも感謝 ~命の授業講演家・腰塚勇人」

 怪我をするまで、僕は競争が大好きな人間でした。「常勝」が信条で、人に負けない生き方をずっと貫いていたんです。だから「助けて」なんて言葉は口が裂けても言えない性分でした。それが怪我ですべて人の手を借りなければならなくなりました。僕が一番したくない生き方でした。苦しいし、泣きわめきたいし、「助けてっ!」って言葉が口元まで出かかってくるけど、プライドが邪魔してそれを言わせない。ここで弱音を吐いたら、家族に心配をかけてしまうと思うと、なおさら言えませんでした。皆に迷惑をかけた分、なんとかしたいって気持ちでいたんですが、そのプレッシャーや苦しさに押し潰されそうになってしまって……僕はとうとう舌を噛だんです。    

 自分の未来に絶望感でいっぱいでした。本当は死にたくなんてなかったんです。でも首から下の動かない人生、生き方が分からず苦しかったんです。だけど結局、死に切れなかった。あとには生きるという選択肢しかなくなりました。じゃあ明日から前向きに生きられるかといったら、それは無理です。自分を押し包む苦しさがなくなったわけではありませんからね。

 次にしたことは将来を手放すことでした。自分の将来に期待するから苦しむ。だったらその将来を手放してしまえばいい。周りに何を言われても無反応になりました。そんなある晩、苦しくて寝つけないでいると、看護師さんが声をかけてくれました。「腰塚さん、寝ないと体がもちませんよ。睡眠剤が必要だったら言ってね」って。その言葉に僕の心が反応しちゃったんです。おまえに俺の気持ちが分かってたまるかって、無意識に彼女をグッと睨みつけていました。その看護師さんは素敵な方でね、僕の様子にハッと気づいてすぐに言ってくれたんです。「ごめんね。私、腰塚さんの気持ちを何も考えずに、ただ自分の思ったことを言ってたよね。でも腰塚さんには本当に少しでもよくなってもらいたいと思っているから……、なんでもいいから言ってほしいです。お願いだから何かさせてください」看護師さん、泣きながらそう言ってくれたんです。彼女が去った後、涙がブワッと溢れてきました。あぁ、この人俺の気持ちを分かろうとしてくれてる。この人にだったら俺、「助けて」って言えるかもしれないって思えたんです。

 それまで僕は周りからずっと「頑張れ」って励まされていました。僕のことを思って言ってくれているのが分かるから決して言えなかったけど、心の中は張り裂けそうでした。俺、もう十分頑張っているんだよ……これ以上頑張れないんだよって……。だから救われたんです。あの時以来、凄く思うんです。人の放つ一言が、人生をどうにでも変えてしまうんだなって。だから自分は言葉を丁寧に使おう。言葉をちゃんと選んで、丁寧に使おうって。

 泣くだけ泣いた次の朝、目が覚めるとベッドサイドに飾られていたお見舞いの花がふっと目に入りました。その時思ったんです。「せめて花みたいに生きることはできないかな」って。手足は動かないけど、顔は動きます。だったらできるだけ笑顔でいよう。口も動くんだから、できる限り「ありがとう」って言おう。心も使えるんだから、周りの人がきょう一日元気に、笑顔で過ごせますようにと願おうって。そう決意したら、いろんなものがどんどん変わっていったんです。ドクターとも、看護師さんとも、リハビリの先生とも、凄く仲良くなって、毎日が楽しくって。首の神経が全て切れていなかったのも幸いして、3週間後には奇跡的に車椅子に移ることができたんです。事故に遭ったという事実は変わりません。でも起こったことの見方、捉え方は変えることができるんです。そして生き方を「常勝」から「常笑」に切り替えて、いつも笑顔でいよう、いつも感謝をしよう、周りの人々の幸せを願おうと決意したら、毎日の小さな幸せに気づけるようになったんです。