感動は人を変え、夢は人を豊かにする

今日の特別メニューは、「ふわとろオムライス」でした。いつもであれば盛付の手伝いをするのですが、卵を焼く料理長の隣で、ひたすら卵を割り、調味料や牛乳を入れ混ぜる‥をひたすら続けました。それにしても料理長の手際の良さはさすがです。三十秒とかからず、次々とふわとろの卵が焼けていくのですから。その上、卵を焼くだけでなく、他の料理にも目を配り、指示を出す姿を見て、すごい!と感動しました。やっぱりうららかな風の料理長はすごい!

椋鳩十(むくはとじゅう)氏は、「片耳の大シカ」「孤島の野犬」など日本における本格的な動物文学のジャンルを切り拓きました。椋氏がある雑誌に語ったエピソードが、私の琴線に触れましたので皆さんにぜひ紹介させてください。

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児童文学作家の故・椋鳩十氏の故郷は木曽の小さな村。三十年ぶりに小学校の同窓会が開かれたとき、名前すら思い出せない人が座っていました。周りに尋ねると、小学校時代はいつも校庭の隅のアオギリの木にポツンともたれていた彼…。今は威風堂々とした様子で、地元でも一、二の農業指導者として慕われているとのこと。

彼を変えたものは―――

無気力な生活を送る息子のために買い与えた「ジャン・クリストフ」。本を開くこともせず埃をかぶったまま。子どもに読めという前に自分で読んでみることにしました。その本に感銘を受けて引き込まれていきます。感動がこみ上げ、三回も読破。本の内容は、聴覚を失ってなお自分の音楽を求め苦悩したベートーベンがモデルといわれる名作。主人公ジャンの苦悩と運命が、彼にはわがことのように感じたのです。しかし、ジャンは自分とは違う、ジャンはどんな苦しみに落ち込もうが、必ず這い上がり、絶望の底に沈んでも、また這い上がってくる。火のように生きている。

「自分もこのように生きたい」

彼は目覚めました。「自分は農民だ。農業に燃えなくてどうしよう」。彼は農業の専門書を読みあさり、農業専門委員を訪ねては質問し、猛烈に勉強を始めました。斬新な農業のやり方を試みて成功させ、そして、頼りにされる農業指導者に変貌したのです。

『感動は人を変える。夢は人を豊かにする。そして、感動し、夢を抱くことができるのは、人間だけである。天から授かったこのかけがえのない資質を育み、さらに磨いていくところに、前向きな人生は拓けるのではないだろうか』