命が生きようとしている‥
今日は、利用者さんと佐世保発祥の「シチリアンライス」の盛り付けをしました。初見参のメニューは作る時にワクワクします。どう盛り付ければ、お客様に喜んでいただけるか‥作ることに没入するんです。そう、一個入魂の思いで。来月以降のメニューにシチリアンライスを加えるかは未定ですが、うららかな風の特別メニューは「一期一会」になることもしばしばございます。定番メニューだけでなく、気になる特別メニューがありましたら、躊躇せずにご注文くださいませ。
広島のゴールデンウィークの風物詩「ひろしまフラワーフェスティバル」(FF)は3日間とも天候に恵まれて、過去最多となる181万人余りが訪れました。FFがはじめて開催されたのは約50年前の1975年。FFのニュースを見ると、亡くなった父に連れられて出かけたことを思い出します。酒好きの父の目当てはFFではなく、源蔵という居酒屋で安酒を飲むのが目的。子どもの私は揚げたての小イワシの天ぷらを分けてもらうだけで、満足していたように思います。
話が脇道にそれてしまいましたが、「人の輪を広げ、平和を喜び合い、その尊さを世界へ伝えよう」、そんなFFの心を脈々と伝えてきたのが公式テーマソング「花ぐるま」です。歴代のフラワー歌手たちが、この歌で祭典の幕開けを告げてきました。
♪花が輪になる 輪が花になる まわれ輪になれ まわる地球は花ぐるま
この「花ぐるま」は1979年に誕生しました。3回目のFFをさらに盛り上げる「フラワー賛歌」を作ろうと、FF実行委員会が、歌詞を公募。愛知県の会社員男性の作品が選ばれ、曲のほうは当時、銀行員でもあったシンガー・ソングライター小椋佳さんが担当しました。(作詞ではなく作曲というのが意外でしたが‥。)
ところで、小椋さんの息子さんは14歳で若年性脳梗塞になり、一時植物状態になりました。医師からは「治る見込みはない」と告げられました。43歳で銀行員だった小椋さんは仕事が終わると毎日病室を訪れましたが、回復の兆しは見えません。
ある日、「彼の耳元で『あなたが美しいのは』という曲を口ずさんでみたら、息子が一緒に歌い始めたのです」。記憶も言語も失ったはずの息子が、今、自分と一緒に言葉を発し、メロディーを追いかけている。奇跡としか言いようがありませんでした。息子の命が生きようとしている……。涙がとめどなく溢(あふ)れたそうです。
これを機に息子さんの体は徐々に回復。その後に、巡り会った琵琶の音に魅了され、琵琶づくりの厳しい世界へ。10年もの修行を経て、今では日本に3人しかいない琵琶づくりの職人として伝統を支えています。音楽は時に生きる力を呼び覚ましてくれます。自分の身に代えても救いたいという「魂の歌」は、消えゆこうとした息子さんの意識を目覚めさせる父親の強いパワーがあったに違いありません。
後年、小椋さん自身もがんとの闘病生活を送ることになりました。「余命」を明るく受け止めて希望をもって生きる「がんは手ごわい病気ですが、深刻になり過ぎることはないと思います。僕の場合も、生きる意味を求めて、日々、努力を続けることに変わりはありません」。今では歌うと息が切れ、ご自身が歌うことは難しくなりましたが、曲を作ることはまだまだできます。FFが続いていくかぎり歌い継がれるであろう「花ぐるま」のように、多くの人たちに、明るく、優しく、時に力強く生きる力を与えてくれる曲たちをこれからも作り続けてください。