『おかげさま』をお守りに。

 最近はご来店いただくお客様が本当に多くなりました。開店時間は11時から13時30分と短い時間なのですが、早い時間に完売することもあります。と言いますのも、フードロスにならないよう数量を抑えつつ販売させていただいていることも一因になっています。今日の日替わり弁当は主菜が「エビカツ」だったのですが、見込みが甘いせいもあり早い段階で完売してしまいました。折角ご来店いただいたにもかかわらず、お断りさせていただいたお客様もおられました。申し訳なく思っております。お目当てのものがございましたら取り置きを致しますので、事前にご一報くださいませ。

 ちなみに明日の特別メニュー「牛すじカレー」は、前日ですが既にご予約分だけで完売となりました。ご検討されていたお客様、どうかご容赦ください。今週は「コロッケ弁当」を販売しておりますが、なかなか皆様の目に留まらないのか、注文される方は多くありません。ただ一度注文された方からは「めちゃくちゃうまかった!」と感想を頂くなど、リピーターが続出しております。そうなんです、このコロッケを一度召し上がるとはまります。どうぞお試しくださいませ。

 ラジオで流れていた話を紹介させてください―――

 彼女の生家は代々の農家。もの心つく前に母親を亡くした。だが、寂しくはなかった。父親に可愛がられて育てられたからである。父は働き者であった。3ヘクタールの水田と2ヘクタールの畑を耕して立ち働いた。村のためにも尽くした。行事や共同作業には骨身を惜しまず、ことがあると、まとめ役に走り回った。そんな父を彼女は尊敬していた。父娘2人の暮らしは温かさに満ちていた。

 彼女が高校3年の12月だった。その朝、彼女はいつものように登校し、それを見送った父はトラクターを運転して野良に出ていった。そこで悲劇は起こった。居眠り運転のトレーラーと衝突したのである。彼女は父が収容された病院に駆けつけた。苦しい息の下から父は切れ切れに言った。

 「これからはお前一人になる。すまんなぁ……」 

 そして、こう続けた。

 「いいか、これからは『おかげさま、おかげさま』と心で唱えて生きていけ。 そうすると必ずみんなが助けてくれる。『おかげさま』をお守りにして生きていけ」

 それが父の最期だった。父からもらった「おかげさま」のお守りは、彼女を裏切らなかった。親切にしてくれる村人に彼女はいつも「おかげさま」と心のなかで手を合わせた。彼女のそんな姿に村人はどこまでも優しかった。その優しさが彼女を助け、支えた。父の最期の言葉が彼女の心に光を灯し、その光が村人の心の光となり、さらに照り返して彼女の生きる力になったのだ。

 男手一つで育てあげ、あともう少し、本当にもう少しで手が離れるところで旅立たなければならなくなったお父様の心中はいかばかりだったか‥。彼女の心にしっかりと刻み込まれた「おかげさま」という言葉は、お守りのようにいつまでも、いつまでも彼女を守ってくれるにちがいありません。